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●リレー連載映画レヴュウ/第十二回 『未来世紀ブラジル』 | ||||
”技術”と云うものは何らかの形にするために用いられる。 当然であるが「〜のための技術」。これが技術の本質だろう。 謂わばその形態を形作るために用いられる創作手段だ。 小説を書く、漫画を、絵画を描く。音楽を演奏し、映画を撮る、技術。 小説漫画絵画音楽映画という形態をかたどるための技術。 つまり、「映画監督術」なんかを片手に経験を磨けば映画は撮れる。 技術とはその様にあり、そのために在る。 創作は技術だけあれば形にできるのだ。 けれども一方、”表現”と云うものがある。 この表現というものは形態とイクォールで結ばれうるものではない。 言葉を連ねることで何らかの表現を行ったからといって”小説”になるとは限らないし、楽器を用いた表現だからといって”音楽”になるとは限らない。 この”表現(アート)”と”技術(テクニック)”のせめぎ合いが緊張感を生み、また誰もが観れることのない「好き/嫌い」を二分しうる”作品”となるのだろう。 可も不可もない技術だけで作られたタイトルや、プリミティブなだけで親しか理解しようのない赤ん坊の泣き声のごときタイトルも五万とある。 「未来世紀ブラジル」に関して言えば、好きか嫌いか真っ二つに分かれるだろう。 それこそ映画体験だ。 舞台は20世紀のどこか。 オーウェル1984のパラレルワールド染みた全体主義国家。 「情報省」が都市に住む住人を管理し、ナチスカラーのダークスーツに身を包んだエリートが支配し支配される世界。 情報省は細分化されており退屈で出世の見込みのない「情報記録省」にエリートの出でありながらなんら不満なく勤めるナス面のサム・ラウリーが主人公だ。 サムは毎夜ごと夢を見る。 青銅の鎧に身を固め一振りの剣を携えて人工の羽をイカロスの如く羽ばたかせ空を駆る。 目指す先にはキラメク羽のない天使、天女然とした女神。 夢の中のサムは彼女を求めて大空を舞い、雲を裂き夢が続く限り飛び続ける。 そんな夢を見ながら過ごす平穏な暮らしから一転、騒乱の中心でありつつも巻き込まれていく異様なシュチュエーションに彼は見舞われることとなる。 「情報剥奪省」っでの機械トラブルによる誤認逮捕がそのきっかけだ。 「情報省」では相次ぐ爆弾テロ根絶を目指しており、容疑者のA・タトルを追っていた。 しかし情報剥奪省のマシンに蟲(バグ)が入り込みタトルであるところを「バトル」として出力してしまう。 その情報を元にクリスマスを祝っている無害な一市民であるバトル一家の部屋へ強行突入をかけ無実のバトル氏を捕らえ剥奪省は去っていくのであった。 出社時刻に大幅に遅れていたサムは、バトル氏の逮捕が誤認であることを訴えに情報省へやっていた一家の階上に住む謎の女性とつかの間の邂逅をする。 省の監視モニタに映る彼女の姿はまさにサムの夢の女であった。当然サムは彼女の姿を探すも見失ってしまう。 さて、情報省ではサムのさえない上司カウツマン氏がサムを探していた。 情報省では逮捕の後に行われる拷問の費用を当人に請求するのだが、この請求した額が多すぎ返金する必要があったのだ。 返金しようにもバトル一家には口座がなく、サムは小切手を自らで向き手渡しに行くこととなる。 バトル一家の住む公団住宅へとメッサーシュミットを駆り部屋へと上がるとあの夢の女の姿を見かける。 彼はやはり彼女を追うも今度も取り逃がしてしまう。 が、バトルの遺児から彼女の名を聞き、一つの手掛かりを得た。 彼の夢に名前が付いた。 ジル・レイトン。 それが彼女の名だ。 彼はこれまで拒んできた出世を受け入れ情報剥奪省へ行くことを決意する。 そこへ行けば彼女の詳細な情報を引き出すことができるだろうからだ。 彼は情報省のエリートであった亡き父の友人、次官ヘルプマン氏とのコネを利用し剥奪省へと至る。 彼はこの情報省が管理する理不尽さに満ちた世界で、夢の女を手に入れることができるのであろうか。 -2-
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