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『恐怖の人体実験 呪いのわら人形』2002年:85分:日本
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●リレー連載映画レヴュウ/第一回 『恐怖の人体実験 呪いのわら人形』 |
「ビデオレンタル」という名のみかろうじて生き残ってはいるものの、今やレンタル店で「ビデオ」を借りる人間は皆無にひとしく、いよいよ記録媒体としてのVHSはトキのごとき絶滅危惧種となりつつある。いやそのこと自体は文明の趨勢であるから一向構わぬのだけれども、クローネンバーグの『ビデオドローム』や鈴木光司の『リング』で描かれたような、オブジェとしてのビデオテープが孕んでいた呪物的側面までもがともに亡びてしまうのならそれはいかにも寂しいことで、たとえば心霊ビデオのジャンルで一時代を画したシリーズ『ほんとにあった!呪いのビデオ』はやはり『呪いのビデオ』でなければいけない。『ほんとにあった!呪いのDVD』ではどうにも間が抜けていて、感じが出ないのである(ちなみにこの作品、原題のままDVD化されている。倒錯したタイトルだが賢明な処置であろう)。 ★ まずもって紹介したいのはタガワカンタという監督である。徹底したヤラセ主義、あざといセンセーショナリズム、そのくせツボをしっかりと押えた構成などに特徴があり、こと作家性の稀薄であるこのジャンルにおいて一種独自の位置を占めている。スタッフロールを観ずとも「こいつはタガワ作品だな」とはっきり指摘できるほど演出に癖があり、際物めいた作品が好きな人間にとってはたまらなく面白い。 そもそも心霊ビデオの大半は幾ばくかのヤラセを含んでいるわけだが(ただしドラマ系作品は除く)、タガワ作品はそのヤラセ的側面をどこまでも誇張して描いており、『ほんとにあった!呪いのビデオ』のようなリアリズム系演出法とは端から無縁である。その大がかりであることもはや非日常的とさえ云ってよく、ヤコペッティ『世界残酷物語』やデオダートの『食人族』、矢追純一のUFO特番や藤岡弘探検隊シリーズなどモンド系ドキュメント作品の味わいに極めて近い。 たとえば『TV放映禁止シリーズ 杉沢村伝説』では、かの都市伝説(ところで杉沢村って覚えてますか)の舞台となった廃村を探すうちスタッフ一同道に迷い、山奥の人家に辿りつく。道を尋ねようとドアを叩くも無人らしく誰も出てこない。荒れ果てたその家内の戸棚から「この度の不祥事によって本杉沢村を廃村とする云々」といった日本政府の通達書が現れて、ここがまさしく杉沢村だったと判明、次の瞬間裏口からなぜかミリタリールックにナイフで武装した男が現れて、いきなりスタッフが襲撃される。悲鳴をあげて逃げまどうスタッフ。うち数人は逃げ遅れ、今も行方不明のままである、というお話。 もし実話ならば大したスクープだが、通達書の文言も不自然なら、唐突に現れるミリタリー狂人も不自然。そもそも戦前に惨劇のあった村と、このナイフを構えた男とはまったくもって何の関連もないのである。全編いくらなんでもそれはないでしょう、と叫びたくなるような展開のつるべ打ちでこれはどう贔屓目に観てもヤラセとしか思われない。 とはいえそこに目くじらを立ててしまっては、タガワカンタの作品を鑑賞したことにはならないのである。いかに娯楽性の高いフェイクドキュメントを提供するか、この監督が追求しているのは実のところただそれだけなので、杉沢村が実在するか否かなどという事実の検証はタガワ作品においてまったくの些事に過ぎない。我々としてもそのどぎついフェイクぶりを愉しめばそれで良く、エンドロールに「ロケ地協力・岩手県」の文字を見つけてしまったとしても(杉沢村は青森県にあった筈だ!)、怒るよりまず先に大笑いすべきなのである。 -1-
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