結城一誠過去作品展示
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『恐怖の人体実験 呪いのわら人形』2002年:85分:日本
ジャケット

+INTRODUCTION+
TV放送禁止シリーズのスタッフが遂に手をつけた禁忌、わら人形―
「科学文明が発達しきった21世紀に呪いなんて・・・」
笑い飛ばすスタッフは、一体9000円のわら人形を持ち、実験を開始した。
その実験とは・・・TV番組では決してありえない[実際に人を呪ってみる]ことだった。

神社のロケ中に彼らは驚愕の場面井遭遇する。
古来通りの白装束を身に纏い、一心不乱に人形を打ち続ける女を・・・

「何で見つかるのよぉおぉお」!

木霊する絶叫を背に、逃げ惑うスタッフ。
果たして「のろいのわら人形」は本当に効くのか!?

テレビでは絶対できない衝撃内容!!
糊化?スタッフ1名、緊急入院!
実験・検証で今、明かされるのろいのわら人形真実。
その目撃者は貴方です!

(引用元 パッケージ裏)

監督
タガワカンタ
脚本
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編集
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出演
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第二回
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●リレー連載映画レヴュウ/第一回 『恐怖の人体実験 呪いのわら人形』

 「ビデオレンタル」という名のみかろうじて生き残ってはいるものの、今やレンタル店で「ビデオ」を借りる人間は皆無にひとしく、いよいよ記録媒体としてのVHSはトキのごとき絶滅危惧種となりつつある。いやそのこと自体は文明の趨勢であるから一向構わぬのだけれども、クローネンバーグの『ビデオドローム』や鈴木光司の『リング』で描かれたような、オブジェとしてのビデオテープが孕んでいた呪物的側面までもがともに亡びてしまうのならそれはいかにも寂しいことで、たとえば心霊ビデオのジャンルで一時代を画したシリーズ『ほんとにあった!呪いのビデオ』はやはり『呪いのビデオ』でなければいけない。『ほんとにあった!呪いのDVD』ではどうにも間が抜けていて、感じが出ないのである(ちなみにこの作品、原題のままDVD化されている。倒錯したタイトルだが賢明な処置であろう)。
 ところでこれまで何万何十万と発売されてきたVHSタイトルのうち、今日DVD化されているのはそのほんの一握りにすぎない。いかに石井輝男の『恐怖奇形人間』が手軽に入手できる世の中になったとはいっても、いまだ陽の目をみていない作品、この先永久にDVD化されないであろう作品の方がはるかに多いので、先に触れた〈心霊ビデオ〉などはそうしたジャンルの最たるものであろう。
 そもそもご存知ですか、〈心霊ビデオ〉。タイトルだけはやたらに出ているのに、借りる人間にはほとんど出会ったことがないという不可思議なジャンル。週末の恋人たちも幼児をつれた家族連れも、まるで存在しないもののように素通りしてゆくレンタルショップの無人境。「呪なんとか」「邪なんとか」「呪いのなんとか」といった紛らわしい題名がズラズラ並び、そのうえジャケまでが似通っているという徹底したパルプの世界。
 ヒット作である『ほんとにあった!呪いのビデオ』がDVD化されたのはまさに例外中の例外で、本来レンタル市場を中心としたこのジャンルは低予算での量産多作を旨としているから、云うなれば作りっぱなしの使い捨て、予め忘却を約されていること往年のアダルトビデオと双璧と云ってよい。もちろんその場しのぎの凡作愚作も多いのだが、というよりも大半が悲しくなるくらいにそうなのだが、ときには思わぬ拾い物をすることもあって、そのため私は未だにこのジャンルから目を離せずにいる。
 堀川をひたすら北上し、今出川を越え、北大路をひた走り、鴨川を渡ったところに聳える大型ビデオ店に夜な夜な通うといった行為を数年来つづけているのも(このくだり京都市の地図を用意してお読みください)、ひとえにDVD化されることのない心霊ビデオを見たいがためで、それに費やした時間をたとえば漢検の勉強にでもあてていたなら私ももうちっとは賢くなったかも知れないな、などと時おり思わぬではないけれども、まあここまで来てしまっては詮方あるまい。せめて私が「これは!」と感じた数少ない心霊ビデオを紹介することで、自分なり他人なりを慰めることに致しましょう。
 


 まずもって紹介したいのはタガワカンタという監督である。徹底したヤラセ主義、あざといセンセーショナリズム、そのくせツボをしっかりと押えた構成などに特徴があり、こと作家性の稀薄であるこのジャンルにおいて一種独自の位置を占めている。スタッフロールを観ずとも「こいつはタガワ作品だな」とはっきり指摘できるほど演出に癖があり、際物めいた作品が好きな人間にとってはたまらなく面白い。
 そもそも心霊ビデオの大半は幾ばくかのヤラセを含んでいるわけだが(ただしドラマ系作品は除く)、タガワ作品はそのヤラセ的側面をどこまでも誇張して描いており、『ほんとにあった!呪いのビデオ』のようなリアリズム系演出法とは端から無縁である。その大がかりであることもはや非日常的とさえ云ってよく、ヤコペッティ『世界残酷物語』やデオダートの『食人族』、矢追純一のUFO特番や藤岡弘探検隊シリーズなどモンド系ドキュメント作品の味わいに極めて近い。

 たとえば『TV放映禁止シリーズ 杉沢村伝説』では、かの都市伝説(ところで杉沢村って覚えてますか)の舞台となった廃村を探すうちスタッフ一同道に迷い、山奥の人家に辿りつく。道を尋ねようとドアを叩くも無人らしく誰も出てこない。荒れ果てたその家内の戸棚から「この度の不祥事によって本杉沢村を廃村とする云々」といった日本政府の通達書が現れて、ここがまさしく杉沢村だったと判明、次の瞬間裏口からなぜかミリタリールックにナイフで武装した男が現れて、いきなりスタッフが襲撃される。悲鳴をあげて逃げまどうスタッフ。うち数人は逃げ遅れ、今も行方不明のままである、というお話。
 もし実話ならば大したスクープだが、通達書の文言も不自然なら、唐突に現れるミリタリー狂人も不自然。そもそも戦前に惨劇のあった村と、このナイフを構えた男とはまったくもって何の関連もないのである。全編いくらなんでもそれはないでしょう、と叫びたくなるような展開のつるべ打ちでこれはどう贔屓目に観てもヤラセとしか思われない。
 とはいえそこに目くじらを立ててしまっては、タガワカンタの作品を鑑賞したことにはならないのである。いかに娯楽性の高いフェイクドキュメントを提供するか、この監督が追求しているのは実のところただそれだけなので、杉沢村が実在するか否かなどという事実の検証はタガワ作品においてまったくの些事に過ぎない。我々としてもそのどぎついフェイクぶりを愉しめばそれで良く、エンドロールに「ロケ地協力・岩手県」の文字を見つけてしまったとしても(杉沢村は青森県にあった筈だ!)、怒るよりまず先に大笑いすべきなのである。

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