結城一誠過去作品展示
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●リレー連載映画レヴュウ/第一回 『恐怖の人体実験 呪いのわら人形』
朝宮運河
ジャケット


 『恐怖の人体実験 悪魔のレポート』はこの監督のもつセンセーショナリズムが前面に押しだされた名怪作で、「人間はどれだけ醤油を飲めるか」「殺人現場に泊まると幽霊は出るか」「拷問は本当に効果があるか」「樹海で迷うとどうなるか」等の罰当たりな実験を、例によっていかがわしさ横溢の演出で描いている。醤油を飲みまくったスタッフが瀕死の重体に陥る冒頭の実験も愉しいが(当然これもヤラセであろう。救急車は写っているがそこに搬送されるシーンはない)、わけても出色は樹海での探検である。
これが田中餌蝋氏だ タガワ監督、心霊現象研究家を自称する田中餌蝋(じろうと読むのです)、ADのヒラノ、カトウなどタガワ作品ではおなじみの面々が樹海に乗りこみ、まったく必然性のない喧嘩をくり返した挙句(食糧にコーンフレークを持ってきたとかこないとか、腐った弁当を食うとか食わないとか)、案の定道に迷って、ついには死体まで発見してしまうというドキュメントである。
 これなどを観るとタガワカンタという人はつくづく試聴者の興味を解っているな、と感心してしまう。樹海といえば変死体、というのが世間の通り相場ではあるけれども、そう簡単に死体など見つかるわけもない。ないならば作ってしまえ、というのがこの人の基本的なスタンスで、樹海をさまよっていると実にタイミングよく変死体が現れるのだが(モザイク処理が為されていて最後まで視聴者の目に触れることはない)、こうした扇情主義に徹した演出というのはやろうとしてもなかなか出来ることではない。娯楽としてのフェイクドキュメントを成立させるには、生真面目さや勤勉さよりもむしろ山師的感性が必要とされるのであろう。思えばかの尻すぼみ作品『ブレアウィッチプロジェクト』に欠けていたのも、まさしく山師的感性に他ならなかった。

煙草棄てて倒れる とここまで書いてきてやっと話が『恐怖の人体実験 呪いのわら人形』に及ぶ。藁人形の効力を検証する、というこの作は丑の刻参りが行われている山中での現場取材と、タガワ監督率いるトランスフォーマー社内での痴情のもつれとが絡みあい、いかがわしい見世物小屋的恐怖が横溢して、数あるタガワ作品の中でも出色のフェイクドキュメントになっている。
 藁人形の取材に入った山中では、タガワ作品のお約束であるまったく必要のない喧嘩が勃発、山林の持ち主が吸い殻を捨てるなというのに対して、なぜかタガワカンタは頑なに煙草を捨てつづけ(何度観てもまったく意図がわからない)、ついには掴み合いの大喧嘩になるのだが、そもそも煙草を捨てようが捨てまいが作品の主旨にはなんの関わりもないではないか。呪いの取材はどうなったのだ。このシーンを観れば明らかなとおり、タガワ監督は確実に「わかってやっている」。まともなドキュメンタリーを撮ろうとしている人間ならばこんなシーンを挿入するわけはないのである。
 併行して語られるトランスフォーマー社内での痴情事件にしても同様だ。ADのカトウがディレクターのコウサカに恋人を寝取られ、性病まで感染されて、藁人形の呪詛を決行するのだが、何日経ってもコウサカ氏の体調に変化はない。一方、無関係のはずのADヒラノが突如、体調不良を訴えて奇声をあげながら救急車で運ばれてゆく。どうやらヒラノの奇病は呪詛によるものらしいが、それでは誰がヒラノを呪っていたのか? カトウが呪っていたのはコウサカではなく、実はコウサカ以上に女癖が悪いというヒラノではないのか?
 やがてタガワ監督の口から驚くべき事実が明かされ、その疑いはいよいよ深くなってゆく。カトウが恋人と思っていたのはそもそもヒラノの恋人であり、カトウは単に恋人たちの刺激剤として利用されていただけなのだ、と。退院してきたヒラノを詰問するカトウ。逆に激昂し殴りかかってくるヒラノ。さあ大変だ。狭い事務所内はたちまち情痴の修羅場と化す!・・・・・・のだが、どうでも良いでしょうこんな話?

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