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人間の約束1986年:124分:日本
人間の約束

+INTRODUCTION+
新興住宅地で起きた老女の死を巡り、老人の痴呆を取り上げ、介護や親子の絆といった問題を描いた社会派のホーム・ドラマ。 東京都多摩市の新興住宅地にある森本依志男宅で、寝たきりの老母、タツが死んでいた。調べてみると他殺の形跡が見られた。 そして、その日の夕方、タツの夫の亮作が、自分が絞殺したと自首する。 驚く息子夫婦だったが、取調べをしてみると亮作自身もかなりのボケの症状が現れていた。 やがて、痴呆の老人を抱えた家族の苦悩が浮き彫りになっていく……。
引用元:ALLCINEMA

監督
吉田喜重
原作
佐江衆一
『老熟家族』
脚本
吉田喜重
宮内婦貴子
撮影
山崎善弘
編集
鈴木晄
音楽
細野晴臣
出演
三國連太郎
村瀬幸子
河原崎長一郎
佐藤オリエ
杉本哲太
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第十三回
第十四回
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●リレー連載映画レヴュウ/第十五回
『或る郊外の<怪奇>―『人間の約束』』

●プロローグ

今年の2月5日より15週に渡って綴られてきた五人によるリレーレビューもいよいよ終局の時を迎える。今回私結城が僭越ながら締めを務めるにあたって(まあ順番で一番最後なのだから)取り上げる映画は、無謀にも初見のものである。1986年に公開された吉田喜重監督作品『人間の約束』。吉田が『戒厳令』以来13年ぶりにメガホンを取った劇映画である。
何故にこの映画でなければならなかったのか。それは追い追い表し示すことにして、敢えてこの手の映画に手を出すということに付随するのは、直感まるで博打にでも出たような感覚である。吉田喜重といえば、古くは『秋津温泉』、『日本脱出』、『エロス+虐殺』、『煉獄エロイカ』、『さらば夏の光』、『告白的女優論』、そして『戒厳令』と1950〜70年代に掛けて評価の高い作品を数々発表している日本の代表的な映画監督の一人である。
その吉田喜重が10年以上もの間を空けて、この作品を撮るに到った理由は不勉強なので知り得るところでないのだが、昭和初期の二・二六事件と思想家・北一輝を取り上げた前作の『戒厳令』(当サイト・映画レビューアーカイヴ収録の筆者によるこの作品のレビューを参照されたい)とは一変して、この映画で取り上げられたテーマとは人間の<老い>である。具にすれば<老人性痴呆>、いわばアルツハイマー性認知症に冒された老親を抱えた家族模様である。従って、映画の内容は重く翳りのあるものであり、謹慎なく軽々しく切り取っては語れるものではないのだが、敢えてそこを自らの言葉でえぐり取りたくなるのも、レビュー展開にあたっての素直な感情であろう。かといって尖鋭なる社会派の批評ができるという頭があるわけではないから、深刻なれど美を秘めた映像空間と思わず反語を催す遊戯空間とをさ迷いつつ、私感本位に筆を畏れながらに進めることにする。

人間の約束

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