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●リレー連載映画レヴュウ/第八回 『『恐怖奇形人間』 広介、貴様も奇形人間になぁるんだぁよ!
ジャケット

 そしてあえて書いてしまおう。
 この映画の魅力は最後の10分を抜きにしては語れないのだ。
 あとでこの映画を観るつもりであればここから先は読まない方がいい。観てから読んでいただきたい。
人間花火 原作『パノラマ島奇談』では、明智小五郎に追い詰められた広介は、自らの死に場所として巨大花火を選ぶ。彼は筒の中にもぐりこみ、自ら点火する。夜空に散る花火と共に、己の夢もろとも闇の中に美しく散るのである。
 文で書いたところで別段おかしくは感じないかもしれない。
 しかし、それを映画でやるとどうなるか?あまたの映画監督が悩む箇所であろう。そもそも人間花火というもの自体が、言葉で表現できこそすれ、実際に映像化するとなれば難しいものだからだ。
「あ、だったら実際に爆発させてしまえばいいじゃないか」
 と石井輝男が思ったかどうかは知らない。世はCGもまだない時代だが、実は爆発するのである。この映画。空中で人体が。
 突然に、暮れかけの薄青い空に、明らかにイラストと分かる二人が浮かぶ。
「?」と思う間もなく、次の瞬間、目の前で人体模型が爆発し、腕が、生首が、ワイヤーで仕掛けの動きで舞うのである。
 しかも「おか〜さ〜ん」と母親を恋う声を叫びながら。
 この予想外の特撮に観客が驚いている間にも、画面はさっとオレンジ色の夕日に変わり、やがてぐんぐん前に迫る白文字で「完」。
 このシーンだけでも見ておく価値はある。
 他にも「広い東京の片隅に、犯罪事件に異常な興味を示す男がいました」と笑いながら登場する明智小五郎が、どう見ても探偵ではなく「おっさん」にしか見えないところや、流れを一切無視したご都合主義なストーリー展開など見所には不自由しない。 
 

恐怖奇形人間

 乱歩さん、あなたの小説はこのように様々に浸透しています。傑作も駄作も含めてあなたの世界を模倣する人間は、これからもまだまだ出てくるでしょう。それを見てあなたは不機嫌になるかもしれませんが、これもまた見世物の一つです。そうそう、丸尾末広が『パノラマ島奇談』を漫画化しましたね。ぼくもいずれ買おうと思っています。わたしもまたあなたの見世物が生んだ子供達を楽しみにしている一人なのです。

 次回は二十面相さながらに、怪談とアクションを演じれば彼がいる。そう、お湯と悪魔の融合体、湯魔シャーマン君だ。そろそろ汗で汚れたきたバトンに、ぼくの口付けを100回ぐらいして彼に手渡そう。

完

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