彼は自分の虚無に正面から立ち会わず他人の現実的困難に首を突っ込むことで払拭しようとした。
 自分の似姿であるセックス産業の住人達に牙を剥き爪を立て徹底的に破壊することで彼は彼に罰を下し真の再生の機会を得ようとする。
 分かるだろうか。
 彼は自分の抱える虚無を払拭するために最初は警察官という彼の力のアイコンに頼った。  そこで起きたことは警察官には成りきれず、獲得し得なかった力へ憧れるだけで手に入れるための具体的な行動は放棄したままポリスマニアの雑誌を眺めてドラッグへ手を伸ばす。
 ドラッグは言わば保険だ。
 少なくとも最悪なのは俺自身ではなく、ドラッグのせいだと思える。
 自分のせいじゃない。
 ドラッグ産業が悪いんだ。
 誤魔化しはそう続くものでもなく破綻をきたし、次に彼が取った行動は少女に取り憑くことだった。
 彼女の怒りや不安、悲しみを我がものとし、彼女の困難を解決することで彼は退屈や孤独、それに付きまとう無力感を払拭しようと試みる。
 他人の感情を利用して虚無を誤魔化し、無力感を他人の現実的困難に首を突っ込むことで隠蔽する。


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