び矛盾を起こす。
我々の知識体系から外れた現象を、我々の知識体系で説明しようとするのだから。
それができないから、奇跡なのだ。
このことにもう一つ説明を加えるならば、「クレタ人の嘘」と同じ論理構造を持つ。
「私は嘘しか語らない」
この言説に生じている矛盾は、仮に「私」が真実を語っているならば、この言説内容と相反し矛盾が生じる。
この言説が真であればこの言説が示す「私は真実を語りえない」こととやはり相反し矛盾が生じる。
この「私は嘘しか語らない」と云う系内に留まる限り、この矛盾は避け得ない。
この言説が矛盾を回避しえるには系内から外れる必要が迫られる。
「私が語りうる真実とは、『私は嘘しか語らない』ことである」
と、最初の言説の一つ上の階層を要求せざるを得ないのだ。
仮にこの系内に留まるならばどうなるだろうか。
「私は嘘つき」だ。と、彼が本当のことを言ってしまっている矛盾。
「私は嘘つき」ならば、彼は「『嘘をついている』という嘘をついている」ことになり、結果「彼は正直」となる。