結城一誠過去作品展示
INDEX ABOUT INFO CONTENTS ARCHIVE BBS LINK
REVIEW: TOP > INDEX > ARCHIVE > MOVIE
『修羅雪姫』 1973年:111分:日本
「修羅雪姫」ジャケット

+INTRODUCTION+
復讐、雪の中での決闘、白い和服のルーシー・リュー。 まさに『キル・ビル』は『修羅雪姫』へのオマージュ的作品であると言っても過言ではないだろう。 一人、また一人と仇を倒し、雪の中に佇む梶芽衣子の美しさがタランティーノに絶賛された。 梶の歌う“修羅の花”もルーシー・リュー扮するオーレン・イシイのテーマ曲になるなど、この作品なくして『キル・ビル』は語れない!! 引用元

+「DVD NAVIGATOR」データベースより+
釈由美子主演でリメイクもされた、梶芽衣子主演のバイオレンスアクション。明治初年、悪辣な方法で金儲けを企てる一味に犯された小夜は、生まれてきた子・雪にその怨念を託して死んだ。雪は修羅の子として育てられ、小夜の代わりに復讐を果たしていく。

監督
藤田敏八
原作
小池一雄
上村一夫
脚本
長田紀生
編集
井上治
出演
梶芽衣子
赤座美代子
大門正明
内田慎一
楠田薫
根岸明美
西村晃
高木均
岡田英次
CURRENT INDEX
AHEADINDEX
REVIEW by 湯魔

修羅雪姫。 1973年の映画である。
もともとは、小池一夫(当時は一雄)原作、上村一夫作画の週刊プレイボーイ誌で連載された漫画である。
小池一夫曰く、修羅雪姫というタイトルはスノーホワイト【白雪姫】の語呂合わせではなく
たまたまだ、と言っているが本当かよ!とツッコミたくなるがここはぐっと我慢しよう。


今回紹介するのは漫画原作の方ではなく、東宝製作の映画の方。
これがまた抜群に面白い。
物語の主人公は梶芽衣子演じる鹿島雪(通称:修羅雪姫)。
姦計に陥り、夫と息子を殺された鹿島小夜が獄中で産み落とした子それが雪だ。
怨みを晴らすには終身刑の己では叶わないと悟った小夜は、色キチガイの如く囚人看守誰彼構わず男とまぐわう。
子供を孕みその子に復讐させようというのだ。(凄まじいw)
小夜は難産の為獄中で息を引き取る。夫と息子と己の無念を晴らすべく赤子の雪に想いを託し。

雪は、道海和尚の下で過酷な修行の毎日を過ごしなんとも凄腕の刺客へと変貌を遂げる。

母の怨みを晴らすべく、姦計を企んだ3人(塚本儀四郎、北浜おこの、竹村伴蔵)を探し出し次々と復讐を果たしていくという至って単純な物語だ。

映画は97分と長からず短からずの丁度良い長さ。
しかしこの97分のなんと濃密なことか。凡てが見所といっても過言ではない。
梶芽衣子は決してアクションに長けた女優さんではないし、尚且つ着物を着ての殺陣だ。

はっきり言ってアクションそのものが良いわけではない。
しかし。しかしだ。ここは監督藤田敏八(ふじたとしやと読むが、愛称のびんぱちと呼ぶ方が好きだね個人的に) の大手柄。物凄く見栄えのするアクションに仕上がっている。
無駄の無いカメラワーク。素早いカット割り。目いっぱい寄りのショットから一気に引きのショット。
そう。カメラワークでアクションを見栄えの良いものにするのに成功した好例であろう。

演出も良い。 梶芽衣子という女優の切れ長の瞳の長回し。
主人公の雪は口数少ない役柄なので目で語る。物凄い眼力だ。目力と言ったほうが良いか。
ここまで睨みで語る女優は他に居ない。いや、ほんと良いんだ。
また、血糊の演出も冴え渡る。適量の血糊を抜群の方向に奔らせる。白い着物に、蒼白い美顔に 真っ赤な血糊が降り注ぐ。 なんて綺麗なんだ。
血はこれまたリアルな血の色ではなく本当の赤ね。ペンテル絵の具の赤を思い出してくれればよい。
原色の赤を使うことによって残酷さを際立たせること無くファンタジーに止める効果があると思われる。
撮影の舞台、ロケハンもばっちりだ。高波荒れる砂浜。大量に海に流れる赤い血。白波に溶け なんとも言えぬ風景画を見ているようだ。

吹き飛ぶ腕、迸る血、さらさらと舞う雪、凡てのファクターが絶妙の分量で混ざり合う。

仇敵北浜おこのの躯を一刀両断するシーンは涙が出るくらいに素晴らしい演出が凝らされている。
これは本当に必見だ。

劇中に登場する戯作者(新聞記者でもある)黒沢年男演じる足尾龍嶺が作品の流れの中で 同時に修羅雪姫という物語本を書き上げていくわけですが、それに合わせて、シーンの終わりで 幕が上から下りてくる演出なんてのも憎らしいくらいに巧い。
最後のシーンで雪が見せる叫びは圧巻である。
生まれたときから修羅として生き、母の怨みを果たすことのみを生涯の役目として生きてきた 雪の人生を総括した叫びである。

クエンティン・タランティーノの【キル・ビルvol.1】でこの修羅雪姫がオマージュされていることは 余りにも有名であるが、観てみるが良い、キル・ビルの持つ雰囲気はそのまま修羅雪姫のもつものそのものである。

キル・ビルの作中でも流れた梶芽衣子の唄『修羅の花』が、当然、修羅雪姫の作中でもかかるのだが これがまた抜群のタイミングで流れるのです。
藤田敏八という偉大な監督が遺した名作中の名作、是非御覧あれ。
30年以上も前の映画であるが、色褪せるどころか、寧ろ色鮮やかに見る者の脳内を染めてくれることでしょう。
原色の真っ赤な血の色で。

※余談 
続編、【修羅雪姫 怨み恋歌】も面白いことには間違い無い。
監督も藤田敏八である。
しかし1に比べると満足度は70%と言ったところか。
1だけでも良い、キル・ビルが好きだった人なら大絶賛請け合いであるからして。

また、作画担当をしている上村一夫の絵がまたまた良いので、原作を近々読んでみたいところである。
原画が何点かDVD特典で見られるのだが、上手いんだなぁ。かっこいいんだ。
何となく似ているタッチで【あずみ】の小山ゆうという漫画家が居るが、この人はどうやら 小池一夫主催のスタジオに居た経歴があるので、小池一夫と常に一緒に居たであろう上村一夫の 影響があったのではないかなぁ、というのは私の勝手な推測でありますが。


(湯魔)

Copyright c2007 FLYER All right reserved.