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『キャビン・フィーバー』 [CABIN FEVER]:2002年:93分:アメリカ
「キャビン・フィーバー」ジャケット

+INTRODUCTION+
新鋭イーライ・ロス監督が低予算で撮り上げ評判を呼んだスプラッタ・ホラー。森の中の小屋でパーティを開いていた5人の若者が謎のウィルスの恐怖に怯え、互いに感染を恐れて恐慌をきたしていく姿を残酷描写満載で描く。

+SYNOPSIS+
学生生活も終りを迎えた5人の若者ポール、カレン、ジェフ、マーシー、バート。最後の夏休み、彼らは好き勝手にハメをはずして楽しむため、森の奥のキャビンを借りて過ごすことに。さっそく、酒とドラッグとセックス三昧で盛り上がる彼ら。ところがそこへ、血だらけの男が突然乱入してくる。5人はパニックになりながらも、なんとか男を追い払い、平静を取り戻す。しかし翌日、カレンの身体に異変が生じる。皮膚が膨れ上がり、やがて爛れて血があふれ出てきたのだ。症状が悪化するにつれ、仲間たちの間に、この謎の病気は伝染するのでは、との恐怖が広がる…。

監督
イーライ・ロス
原案
イーライ・ロス
脚本
イーライ・ロス
ランディ・パールスタイン
出演
ライダー・ストロング
ジョーダン・ラッド
ジェームズ・デベロ
セリナ・ヴィンセント
ジョーイ・カーン
ジュゼッペ・アンドリュース
アリ・ヴァーヴィーン
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REVIEW by 前原一人

 新鋭イーライ・ロス監督によるインディーホラー作品。
 低予算っていうのは聞くまで俺には分からなかったです。
 いや面白い。
 随分器用な人だなあ。
 付き合い始めの頃の友人と好きな映画について話す時あれも好きでコレも好きで、って盛り上がるじゃない。
 その共感の興奮もありつつ新しい友人との新鮮な会話の興奮、相手の語り(騙り)の旨さによる興奮。
 と、そんな雰囲気の良作だと思います。
 ”死霊のはらわた”も”悪魔のいけにえ”も”クジョー”も”2000人の狂人”も好きです。
 タランティーノもデヴィット・リンチも好きだしゾンビ映画は大好物。
 色んなところで言及されているけれどもタランティーノとの親交や三池監督への傾倒振りが”ホステル”という形で結実したり、"2000人の狂人"のリメイクでは制作を担当したり元気この上ない。
 データ調べるために覗いた映画総合サイトでは随分叩かれていたのが意外だったけれども受け悪いのかな。
 公に受けると思ったが案外真っ二つに人気が分かれるのかも。
 勿論映画だし娯楽作だから何が面白いかさっぱりだって人もいるだろうし俺みたいに「ふりかけもってこい!」って観客もいるんだろうなあ。
 俺が面白いと思ったものが絶対第三者にも面白いとは限らないわね。
 面白いってのは一体なんなんだろうなあ。
 結構面白いって評判を聴いても俺にはさっぱりつまらなかったり。
 どうすりゃ楽しめたのか知りたくなる。
 逆にマトリックスシリーズは2が一番面白いと思うし。
 単に趣味が悪いとか言われかねないが畢竟好き嫌い。いいも悪いもないだろうに。  たかが映画。楽しんだモン勝ちじゃないか。
 と、勝ち負けでもないんだろうが。
 さて、昨今低予算でホラーってのが随分レンタル屋に並ぶようになった。
 それとガンアクション。
 暇な学生はかつてならバンドやろうぜ、ってなったろうし今なら映画を作るのだ。
 パンクによってロックンロールスターから観客の手にギターをずり落とさせた王権打倒的革命と見るならば、やはり自主制作映画にもそれは観られる。
 火付け役はジョージAロメロ、サムライミ、タランティーノのラインかと思う。
 それに加えてSONYのVAIO戦略が見逃せない。
 デジタルヴィデオカメラと自宅で編集できるVAIOの存在がここ数年の自主制作映画ブームを可能たらしめた正体じゃないだろうか。
 ご他聞に漏れず俺も自主制作で何本か映画を撮った。
 サイヴァーパンク映画と学生ドラマ、ギャングものとMTV的ノリの映画と幾つか撮ったりして遊びました。
 今も撮り終わってない放置してしまっているモノが一つ、監督ではなく参加している進行中の作品が二つと自主制作は楽しい。
 記念すべき処女作に書き上げた脚本は”セロリアン”っていうホラー。
 主人公たちはやっぱり軽いノリの学生、若者一団で、舞台はやっぱり森で何者とも知れぬ未知なる生物に襲われ死ぬときは一人ずつ。
 セロリが大嫌いだから”アタックオブザキラートマト”って前例も在るし”セロリ”が人を襲うホラー映画の予定だった。
 が、撮影のため森に向かった俺らは何も撮らずに帰った。
 だって季節は冬ですよ。
 北海道の冬はまじ寒い。
 「冬にホラーはねえな」ってのでお蔵入り。
 イーライロスの”キャビン・フィーバー”観て羨ましいったらない。
 血にまみれ実に楽しそう。
 オープニングから我全テンションは挙がります。
 学生一団が夏休みカーステレオからガンガン聴いても居ない「ロック」を掛けて軽薄な話で盛り上がりながら保養地の森へ向かう。
 もう、お馴染み。
 オープニングはこうでなくっちゃ。
 食料調達に入った店の人間は誰も彼も異様で誰もが敵意と悪意を向けているようで、それでいて若者たちは鈍感でコレから先の予兆なんて気が付きもせず通り過ぎ、別荘ついたらセックス組みはベッドへ、純愛カップルは湖でネチネチやって、トラブルメーカーは一人騒動を起こし・・・。
 災禍の兆しが若者たちにも了解できる形でやってくる頃には全てが手遅れ。
 キャビンフィーバーでは浮浪者風のズタボロの男が災禍の配達人として若者たちに迫り、若者たちはイライラして仲間には亀裂が入り軽薄な怒りとやはり薄情な思いやりを随所に溢れさせる。
 嗚呼!青春!
 次々と屍を重ねていく登場人物、助かるようで助かりようの無い状況と展開。
 セックスドラッグロックンロール。
 かつてスプラッタで死ぬ順番はこのアメリカン青春群像が孕むアメリカの道徳を逸脱した者たちの順だった。
 面白かったのは”キャビンフィーバー”では順序が逆になっている。
 しかし映画っていうのは本当に引用の多いものなのだねえ。
 映画に限らず、なのかも知れないけれどもモンタージュって技法が特に明確なジャンルが映画かと思うと、引用とモンタージュの組み合わせはなにより編集に掛かってくるのではないだろうか。
 リンチ映画を引用したかに思えるシーンなんて特に面白い。
 赤いベルベット地のブランケットと少し濃い化粧。
 思い切ったBGM。
 苦痛と快楽の表情の結び合わせはクローネンバーグも内包しているようだし、そんな印象を俺に与えたのは編集によるものだろう。
 当たり前の印象が当たり前にこちらに伝わってくるってのは手腕あってのことだと思うのだ。
 ここでこれがやらたかったの、ってコメンタリーで言うのではなく、観ているものに「うはっ!」って言わせるのは一重に技術の必要なことだろう。
 それがこの人は非常に旨く抜きん出ている気がする。
 先に言ったように映画は引用が多いジャンルかと思う。
 その中できちんとこれは引用です、って明確、かつそれが面白さに繋がっているってのは新人なのに凄い。
 これは引用って分かる分、そのコラージュの仕方とモンタージュの組み合わせにイーライロス節を感じる。
 新作ホステルではどうなってるんだろう。
 タラ兄ぃと三池のキャスティング。
 お祭りじゃないの。

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