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『プロフェシー』 [THE MOTHMAN PROPHECIES]:2002年:119分:アメリカ
「プロフェシー」ジャケット

+INTRODUCTION+
1960年代に実際に起きた不可解な事件を基にしたサイコ・ホラー。
監督はU2、パール・ジャムなどのミュージックビデオと手掛け、「隣人は静かに笑う」でも知られるマーク・ペリントン。
出演はリチャード・ギア、ローラ・リネイ、ウィル・パットンほか。

+SYNOPSIS+
ワシントンの新聞記者ジョン(リチャード・ギア)の妻が、車を運転中にナゾの生物を目撃して事故を起こす。
それから間もなく彼女は病死する。
2年後、ウエスト・バージニアのある田舎町を訪れたジョンは、そこで奇怪な現象が続発していることを知る。
独自に調査に乗り出すジョンだったが……。

監督
マーク・ペリントン
原作
ジョン・A・キール
脚本
リチャード・ヘイテム
編集
ブライアン・バーダン
出演
リチャード・ギア
ローラ・リニー
ウィル・パットン
ルシンダ・ジェニー
デブラ・メッシング
デヴィッド・エイゲンバーグ
アラン・ベイツ
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REVIEW by 前原一人

 幽Vol5にて朝宮運河が書評に寄せていたJ.A.キール原作「プロフェシー(The Mothman Prophecy)」を日本でもドラマ化された 「隣人は静かに笑う」のマーク・ベリントンが監督。
 大学時代、僕が通っていたゼミの今は亡き教授が「奇跡」について講義中触れたことがある。
 奇跡とはいかに在るものか。奇跡という不合理な現象を非常に合理的に理解しやすく話してくれた。
在る現象について合理的に説明しうる知識体系が成立している一つの系に対し、その系内から外れた(すなわち知識体系から外れた)系からの干渉。
 これが奇跡と呼びうる現象の在り方だ。
 興味深いのは奇跡の中身ではなく、現象の現れ方が奇跡を定義付けている点だ。
 このように奇跡を定義した際、何かしらの奇跡に対する「合理的な説明」をしようとする試みはひとたび矛盾を起こす。
 我々の知識体系から外れた現象を、我々の知識体系で説明しようとするのだから。
 それができないから、奇跡なのだ。
 このことにもう一つ説明を加えるならば、「クレタ人の嘘」と同じ論理構造を持つ。
 「私は嘘しか語らない」
 この言説に生じている矛盾は、仮に「私」が真実を語っているならば、この言説内容と相反し矛盾が生じる。
 この言説が真であればこの言説が示す「私は真実を語りえない」こととやはり相反し矛盾が生じる。
 この「私は嘘しか語らない」と云う系内に留まる限り、この矛盾は避け得ない。
 この言説が矛盾を回避しえるには系内から外れる必要が迫られる。
 「私が語りうる真実とは、『私は嘘しか語らない』ことである」
 と、最初の言説の一つ上の階層を要求せざるを得ないのだ。
 仮にこの系内に留まるならばどうなるだろうか。
 「私は嘘つき」だ。と、彼が本当のことを言ってしまっている矛盾。
 「私は嘘つき」ならば、彼は「『嘘をついている』という嘘をついている」ことになり、結果「彼は正直」となる。
真偽は永遠に反転し続け真偽判定はしえないのだ。
 「ひとつの仮説を信じた瞬間、観察者もまた『謎また謎が連鎖するゲーム』すなわち奇妙な偶然と悪意に満ちた混沌の世界に取り込まれてしまう」(朝宮)ゆえ、著者であるキールはいかなる仮説もとらない。
  反し、このゲームにどっぷり浸かってしまった主人公を描いたのがこの映画版「プロフェシー」の物語だ。
リチャード・ギア扮する愛妻家の新聞記者ジョンが妻と新居の下見に行った帰り道、州道にて妻の運転する車で交通事故に遭う。
  一連の奇妙な事件はこの事故を境に頻発するようになる。
  妻の脳内に発見された腫瘍。
  わずか一時間に600キロも移動した怪現象。
 夜毎戸口に現れたというドッペルゲンガー。
 不審な電話。
 預言者に接触し予言者となる中年。
 目に浮かぶ赤い痣。
 増大するモスマン(蛾男)の目撃談。
 イングリッド・コールドと名乗る怪人物の登場。
 予言された惨劇。
 劇中頻発する怪現象に合理的な説明を試みることは可能だ。
 彼、もしくは彼らが狂っているのか。
 世界が狂っているのか。
 劇中超常現象ジャーナリストの手を借りなにかしらの説明を乞う場面がある。
 リチャードとジャーナリストの背後に高層ビルに窓拭き清掃夫がゴンドラで取り付いているのを指し、
 「彼には我々には感知し得ない10ブロック先の交通事故もやすやすと見える」と。
 その説明はとても不気味で、背筋が寒くなるものだ。
 雷に合理的説明をしえる知識体系のなかったかつての文明では「神鳴り」と一つの奇跡として捉えられていた。
 我々とは異なる系の干渉。
 それが雷のように後に理解される現象なのか。
 その可能性は極めて低いことをそのジャーナリストは示していた。
 なんと不気味で不穏な映画だろう。
 劇中にちりばめられたクドい象徴への好みは分かれるかもしれないが、クリスマスの華やかな電飾が一転、 リチャードの心理に呼応するように世界がモノクロに反転するシーンがエフェクトではなくD.C.の冬の風景で見せており、 実に肉薄し追い詰められていく転機となる印象的な演出として成功している。
 スリル、サスペンスフルな映画だが、やはりハリウッド。
 開始40分できっちり男女が絡む。
 おっかねえぜ。ハリウッド。
 病室に現れた男の台詞。
 「彼女は天使を描いていた」
 そしてテープレコーダーに録音されたイングリッド・コールドの声門分析。
 「人間の声ではない。電気だ」
 人間は土から作られ、天使は炎から生まれた。
 だとしたら、モスマンは電気から生まれた天使なのだろうか。
 電気から生まれたアークエンジェル、モスマン。
 マーブルのヒーローのようでちょっとかっこいい。
 マーブルと言えばXMEN3監督変わったがフェニックスサーガやってくれるんだろうか。
 90年代のダークヒーロー、ゴーストライダーの映画も始まるらしい。
 すげえ楽しみ。
 スパイダーマンはついにヴェノム誕生か?ファンタスティックフォーは見ていないがどうもシルバーサーファーがゲスト出演するって噂が。この際だからクロスオーヴァーして欲しいなあ。X-MENV.S.ゴーストライダーV.S.スパイダーマンV.S.ファンタスティックフォーV.S.ハルク。
 対するDCはスーパーマンV.S.バットマンV.S.パニッシャー。
 キャプテンアメリカとウルヴァリン、クリードでオメガレッドの「超人計画」とか映画化して欲しいなあ。
 その前に来年はトランスフォーマーだ!
 デストロン軍団アターック!
 そうそう、この物語にもう一つ合理的な説明を系から外れ、一つ上の階層から試みることはできる。
 「これは映画だ」と。
 しかし、劇中の出来事の多くは実話を基に描かれているのだ。

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