ホラー映画を観れば不安という状況が良く理解できる。
 始め何が起きているか分からない状況と、何が起きているか分かっている状況。
 先の「分からない状況」とは例えば暗闇に蠢く影だったり、不意に現れる人影だったり。
 この状況下、登場人物たちは不安に怯え右往左往している。
 後の「分かっている状況」とは例えば昔から言い伝えられている殺人鬼がその正体だったとか、エイリアンの侵略だったとか。
 この状況下、登場人物たちは恐怖を感じながらもどうすべきか判断を下し行動する。
 不安とは規定されていない、分からない状況を言い、同時にそれが何であるかあれやこれやと可能性に満ちた状況でもある。
 人はその状況を自由というし、これは人が不安を抱く在り様と同じ構造を持っている。
 不安には耐えられないが恐怖の中でなら人は行動を起こせる。
 自己を規定し得ない自由なアーネストは、その状況を手放し安易にジャンキーという状況に自分を規定し、また、彼女のため、という状況に自分を規定する。
 彼は他人を利用しつつも人生を獲得する機会に恵まれた。

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