公・中砂糺を演じる原田芳雄。奔放かつ凄みのある演技は、松田優作をも凌ぐだろう。
その妻・園と後妻・小稲二役を演じる大谷直子。メロドラマのイメージが強い人だが、この映画では台詞を怖く吐く人だ。青地周子を演じる大楠道代は『座頭市』を観た人ならこの人の名演技に覚えがあるだろうか、ここでの柄は軽くもその素振りはエロい。周子の夫・豊二郎を演じるは今は亡き映画監督・藤田敏八。この人の顔は淡泊な言い方だがはっきり言って狡い。しかし本業は役者ではなく数多のピンク映画や『八月の濡れた砂』『リボルバー』などの監督を務めた人だ。ただ印象には残る。平成教育委員会にも解答者として出ていたぞ。この四人がメインだが、他に要所要所で麿赤児や樹木希林、真喜志きさ子などが脇を飾る。といってもこの映画、日本ATG配給でロウバジェットにより撮られたことからキャストは少ない。他にも気になる俳優はいるが、これはあまりに極私的で、いやそれ以前にこういう話はこの枠をワイドショウ化してしまうので、この辺で消火しておく。
ちなみに、この映画のスチール写真撮影は荒木経惟。映画版では観れない妖艶な感覚が漂っている。ミステリーやサスペンスのように推理、想像の種が膨らむシーンを一粒たり、一滴たりとも残してはならない、いや見逃してはならない。が一方で、物語が不明瞭な分、観る側に変則的な文法での