彼、もしくは彼らが狂っているのか。
 世界が狂っているのか。
 劇中超常現象ジャーナリストの手を借りなにかしらの説明を乞う場面がある。
 リチャードとジャーナリストの背後に高層ビルに窓拭き清掃夫がゴンドラで取り付いているのを指し、
 「彼には我々には感知し得ない10ブロック先の交通事故もやすやすと見える」と。
 その説明はとても不気味で、背筋が寒くなるものだ。
 雷に合理的説明をしえる知識体系のなかったかつての文明では「神鳴り」と一つの奇跡として捉えられていた。
 我々とは異なる系の干渉。
 それが雷のように後に理解される現象なのか。
 その可能性は極めて低いことをそのジャーナリストは示していた。
 なんと不気味で不穏な映画だろう。
 劇中にちりばめられたクドい象徴への好みは分かれるかもしれないが、クリスマスの華やかな電飾が一転、 リチャードの心理に呼応するように世界がモノクロに反転するシーンがエフェクトではなくD.C.の冬の風景で見せており、 実に肉薄し追い詰められていく転機となる印象的な演出として成功している。
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