いるように覚え、僅かな浮遊感というかスプリッティングというか妙な視覚的な剥離感を伴っているように感じる。不思議な海。不思議な岩。不思議な緑。不思議なコミュニケーション。そして、不思議な駅。
人によっては眠気を誘う映画になる、と断言できてしまうこの静かな作品の魅力は、森田自身がそう言ってるように何度も観ることができるという点だ。観てみようかなと思ったら、避けずにまず観て欲しい映画だ。私はこの映画で自分が森田芳光の作品が嫌いなわけではないということを知った。森田芳光は好き嫌いがはっきり出る監督かも知れないが、彼の作品を何か観たことがある人は観ても損はしない気がする、そんな映画だ。と一応、売り込んでおくが、はっきり言って、詰まらんと思う人にはまるきり詰まらん作品になること請け合いなのでその度合いは弱めておく。ちなみにこの映画のラストシーンを、その昔に私と私の妹が名古屋の地下街の大型テレビジョンでたまたまやってるのを見掛けて、その鮮烈さを記憶せざるを得なかったのである。それからというものその題名さえわからず、ずっと記憶だけが残り歯痒い思いをしていたが、四年前上京したその秋、これまた深夜のテレビ映画で目にした際に、その映画のタイトルが『ときめきに死す』だと知った。私にとっては池田敏春監督の『人魚伝説』同様、縁のある映画の一つだ。(Y.K.)