ここで気を付けたいのは白の横に黒を置く二項対立ではない。
 白い絵の具から、カンバスに目を移したとき、今度はカンバスが捉えられ白い絵の具が背景となる。
 そうした時、今度はカンバスが対象となっている。
 二項対立による考え方との違いは、同時に対象として扱えない、ということの面白さだ。
 焦点を向けたほうが図として浮き上がり、他方は背景として沈む。図と背景両方を同時に思考することはできない。
 仮に両者を同時に思考できているならば新たな背景を両者の下に敷いた、ということであり、自分でも知らず新たな要素を呼び込んだこととなる。
 展覧会で絵を眺めている時、絵自体が目に飛び込むのはそれを囲う額縁の存在のお陰だ。仮に額縁を含め絵を鑑賞しているならば、美術館の壁が背景となっている。
 それにどんな風に白いか、ってのはカンバスに左右される。
 白い絵の具を語るにはカンバスへの注目も欠かせないと思うのだ。
 二項対立だと白と黒に対して、「これは黒じゃない」「これは白いじゃない」と正しいけれども何も言っていないという自体に俺はよく陥ってしまう癖がある。
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