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【私と漫画・前編】
「結城コラム」ジャケット

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REVIEW by 結城一誠

恒例なら映画や本のレビューなのだが、今回は私にとっての漫画について徒然書いてみようと思う。
幼い頃は漫画コミック誌を目が悪くなるからという理由で読ませてもらえず、漫画といえば喫茶店で親父が読む青年成人漫画、主にビックコミックスピリッツ、週刊漫画、漫画ゴラク、まんがタイムなどをおすそ分けのように読ませてもらう程度だった。今考えたらなんて律儀な子供だったんだろうか。漫画ぐらい友達から借りたりして読める隙はあったんだろうが、確か小学六年当時に買ったコロコロコミックか中公版のドラえもん(併載・チンプイ)が、生まれて初めて買った漫画である。
それまでは、福本和也「〇暴株式会社」、植田まさし「おとぼけ課長」、伊東恒久/向後つぐお「おとこ喰い」、福谷たかし「どくだみ荘」、剣名 舞/加藤 唯史「ザ・シェフ」、林律雄/高井研一郎「山口六平太」、黒鉄ヒロシ「赤兵衛」、弘兼憲史「人間交差点」、雁屋哲/花咲アキラ「美味しんぼ」など思い付く限りに挙げればこんな作品ばかり読んでいた。
それより少し後に、喫茶店で自分で選んだコミック誌に載っていたある漫画を読んでから漫画に対する意識が変わった。松本大洋の初期作品といわれる「点と面」という漫画だった。これが当時の私にはとてつもなく面白い漫画に思えたのだ。劇画劇画してない絵と登場キャラの漫才コンビのようなやり取りが面白かったと覚えているのだが、知る人ぞ知る現在の結城の密室芸やシナリオがなぜか漫才チックになってるのはこの時の影響が強いのかも知れない。
作者の意向で単行本化してないこの漫画を今現在再読することはできないのだが、私にとっては忘れ得ぬ漫画になっている。
かといって少年コミック誌は当時ほぼ読んでいないこともあり、周りの同世代と話が合わない、もしくはできないという小中学生時代を経て、高校に上がる頃にはすっかり漫画を読めない状態になっていた。受け付けてもそれは手塚治虫「アドルフに告ぐ」、藤子・F・不二雄、桐山光侍、横山光輝、秋本治、北条司などの作品であり、鳥山明さえ読めないままであった。音楽にはまってしまったせいもあるが、コミックに小遣いを費やすこともまずなかった。仕方なく実妹の購読してた「りぼん」を読むこともあったが、柊あおいや一条ゆかり、棋士になってヌードになる前の林葉直子がなんか描いてたなあとかいう漠然とした記憶しかない。
十代後半での「ガロ」との邂逅で、アート指向の強い漫画の存在を知った頃には、時既に遅くなかなか入手できない作家の作品が多くあっても読めないという状況に、漫画への情熱はほぼ零になりかけていた。たまに植田まさしや西岸良平を読んで安堵したりしんみりすることはあったが、流行作家の作品を読むことはなかった。これはもはや黄昏流星群の症状である。
とひとまず私の漫画体験を綴っておいて前編はここまで。後編では私の胸を騒がせた数少ない漫画作品を紹介していく。


(YK)

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