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『パイドパイパー』 [PIED PIEPER]:2002〜2006:コミックバーズ:全6巻
「パイドパイパー」ジャケット

+INTRODUCTION+
東東京・錦糸町。街を荒らす実数不明の中学生と、彼等を駆除する自警団357が敵対する緊迫状態の場所。4年ぶりに海外からそこへ戻った夏比古は…!? (1巻)
幼なじみの高橋の死。彼のメッセージに応える間もなく香港に修学旅行にやって来た夏比古、瑛ニ、尼龍の三人。しかし過激で非情な勢力争いに巻き込まれてしまい--!?バイオレンスアクション第2弾! (2巻)
地獄の修学旅行から帰国した夏比古たちを、執拗に狙うロシア人少年。しかし、彼には凄惨な過去があった。少年達のバイオレンスアクション第3弾!(3巻)
ついに夏比古たちの前に姿を現したロシア人少年。その時瑛二は…!(4巻)
"357"二代目統括・小春による凄惨な攻撃は、夏比古の周囲を確実に巻き込み、徐々に全面戦争へと広がっていくが…。(5巻)
少年達の争いは収束の方向へ。しかし瑛二や尼龍をおいて、夏比古はひっそりと姿を消した

著者
浅田寅ヲ
出版社
BIRZコミック
ISBN-10
4-344-80171-7
4-344-80284-5
4-344-80439-2
4-344-80535-6
4-344-80678-6
4-344-80769-3
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REVIEW by 前原一人

パイドパイパー
全6巻
浅田寅ヲ
02年からBIRZで連載開始された浅田寅ヲ「パイドパイパー」が第六巻を持って完結した。
森博嗣「すべてがFになる」の漫画版を手がけたのが浅田寅ヲ氏であり巻末での森氏によるあとがきによると「自分はバイオレンス作家なんで」と浅田氏自らの台詞が掲載されていた。
絵柄構成構図が独特でカッコよく、この人のアクションは是非みたい、と思っていた。
スプーンマン(上巻)を手に入れたのはこの後のことで暫く後に「パイドパイパー」を連載ではなく単行本で知り、読み始めたのである。
「この人のアクションは是非見たい」と、これはでっかい間違い。
アクションではなく、バイオレンスなのだ。
活劇ではなく暴力。
近未来。少年法保護下の中学生を中心とした武装集団と在日系で組まれた自警団357が東京は深川での抗争を繰り返す。
主要登場人物は瑛二、夏比古、ナイロン、高校生3人と幾分都市の離れた友人明浩の4人。
これに瑛二の兄、そして抗争の裏に見え隠れする”少年”を中心となり物語は進む。
英二の幼馴染夏比古がヨーロッパ留学より帰ってきた日、357統括高橋が中学生武装集団のボウガンによる凶弾に倒れる。
この一件を境に就任した新統括小春以降、抗争は激化を増し、357、中学生武装集団、ナイロンの外人部隊と三つ巴のアクションが展開される。
アクションをナイロンが担当しぐいぐいとスピード感を持って読ませるのに対し、瑛二、夏比古の「家族の中の個人」から発生してしまう当然の秘密や謎、衝突が徐々に明らかにされながらバイオレンスが描かれる。 本作で稀に見る強力な”暴力”として具現化されている夏比古の存在が物語の中で加速度的に肥大していく様は快感ですらある。
パイドパイパーとは「ハーメルンの笛吹き」の意でありコミック折り返しに簡単な説明がされている。
このパイドパイパーの意味、劇中に横たわる抗争と暴力の真意が最終巻で遂にベールを脱ぎ圧倒的迫力で幕を閉じる。
これは例えば、「世界の中心で愛を叫んだけもの」、「WORLD is the mine」と同じく暴力の神話だ。
愛とはそもそも暴力の一形態であり、覚悟であり、特にそれが誰かの何かに捧げられたとき、真の姿を現す。
登場人物の名前には画面上で読んだだけでは分からない仕掛けがあり、これが単なるキャラクター付けに留まらない。
各人物が負って生まれた事柄が、「キャラクターを立たせる」ためにではなく真に意味を持ちえている稀有な作品だ。
これだけでかいハナシをわずか6巻で纏め上げたのは、もう、凄い。
完結を機に是非一気に読むのをお勧めする。(前原)

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